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  • 第9回グランプリ・入選作品

ふらの東山エリアフォトコンテスト2025 第9回
グランプリ・準グランプリ作品

この作品は、収穫を終えたタマネギ畑に射し込む朝日を中心に、農家の一日の始まりを象徴的に描き出しています。
稜線から昇る太陽が雲間を抜けて光芒を放つ瞬間は、劇的でありながら決して誇張されることなく、自然の荘厳さと美しさが静かに表現されています。
圃場には整然と並べられたタマネギと、収穫後に積み上げられたコンテナが広がり、地道な農作業の様子がしっかりと描写されています。とりわけ手前のコンテナを前景に配した構成が、画面に広がりと奥行き感をもたらしています。
遠くには朝靄も漂っていて、この時期らしい冷涼な空気感までもが伝わってくる作品となっています。


この作品は、収穫期のタマネギ畑を背景に、地面に座り込んだ子どもの後ろ姿を捉えた、ほほえましくも印象深い一枚です。
圃場にはすでに多数のタマネギが収穫されており、遠景にはトラクターと整然と並んだコンテナなどが広がっています。
タイトルが示すように「今年もたくさん採れるかな?」と収穫を見つめる姿にも見えますが、その無言の後ろ姿からは、むしろ「お父さん、早く仕事終わらないかな?」というお父さんと遊びたいというような思いも感じられます。
農業風景の中に家族の一コマを取り込んだ視点が秀逸で、地域の日常と子どものまなざしが温かく融合した心和む作品となっています。


この作品は、東山・老節布地区のエゾヤマザクラを、月明かりという希少な光源でとらえた詩情豊かな一枚です。
夜の静寂の中、満開の桜が青紫色の空気に包まれ、画面全体に柔らかく幻想的な雰囲気が漂っています。
空に浮かぶ月と、月光を浴びてほのかに浮かび上がる桜の対比が印象的で、昼間とは異なる、夜桜ならではの美しさが見事に表現されています。
色調は控えめでありながら深みがあり、夜間撮影の難しさを感じさせない確かな描写力と感性が光る作品です。静けさの中に宿る自然の気配と美しさを見事に伝えています。

ふらの東山エリアフォトコンテスト2025総評

9回目となる東山エリアフォトコンテストの審査が終了しました。
今回も例年同様、東山エリアの豊かな自然と、そこに息づく人々の営みを捉えた数多くの力作が寄せられました。
特にグランプリ・準グランプリ作品は、主題に対する強い意識と優れた構成力が際立っており、見る者の記憶に深く残る印象的な仕上がりとなっています。いずれの作品も、単なる記録写真を超えた「表現」としての写真の魅力を備えていました。
また、入選作品にも秀逸な作品が多く見受けられました。
四季折々の自然美を切り取った風景写真に加え、かかしや廃屋、ヒマワリ畑、ロールの上の子どもなど、東山らしいユニークな視点をもった作品が並び、表現の多様性と地域への眼差しの深まりを感じさせる結果となりました。
今回、特筆すべきは「人の営み」と「自然」が交差する瞬間を、作者それぞれが独自の感性で捉えている点です。日常の一瞬、誰もが見過ごしがちな情景に光を当て、東山の魅力を再発見させてくれるような作品が多数ありました。これは応募者の撮影技術のみならず、「何を撮るのか」「なぜ撮るのか」という意識の表れと言えるでしょう。
とりわけ樹海学校の生徒による入選作品には、素直な眼差しと感受性が光っており、これからの成長を大いに期待させてくれるものでした。
最後に、本コンテストの開催にご尽力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げますとともに、入賞された皆様に心よりお祝いを申し上げます。
来年はいよいよ10回目となります。
更に東山の魅力あふれる作品と出会えることを楽しみにしております。
20251125
「富良野市東山エリアフォトコンテスト」審査員代表
写真家 菊地 晴夫

ふらの東山エリアフォトコンテスト2025 第9回作品
入選作品(順不同)

入 選
加藤  将矢 「秋彩の丘」

秋色に染まった丘陵と農村風景が、西日に照らされて柔らかく輝く一枚です。
サイロや農業施設が北海道らしい風景のアクセントとなり、紅葉に包まれた山裾との調和が美しく描かれています。
赤みを帯びた光が紅葉を一層引き立てており、夕刻特有の温もりと静けさが画面全体に広がっています。日常の農村風景に、秋ならではの色彩の豊かさを添えた、季節感あふれる作品です。


入 選
吉岡  範文 「春の丘」

この作品は、浅春の丘陵地に広がる畑で行われる春耕の様子を、的確なタイミングと構図で捉えた一枚です。
画面には畝をつくるトラクターが小さく描かれ、広大な大地のスケール感を際立たせています。
とりわけ印象的なのは、薄緑色からこげ茶の土壌へと滑らかに変化する畑のグラデーションで、丘の起伏が陰影によってより強調され、美しいリズムを生んでいます。背景の濃い紺色の空がその立体感を引き締め、静けさの中に春の息吹が感じられる作品です。


入 選
高山  裕二 「極寒に眠る大地」

背景には真冬の富良野岳でしょうか、静寂に包まれた大地の姿を力強く表現した一枚で、張り詰めた空気が画面から伝わってくるかのようです。
霧氷を纏った丘陵の樹林と、その足元を静かに流れる冬霧が重なり、画面に奥行きと広がりを与えています。遠景の山々の稜線も清冽で、冴え渡る空気感が際立ち、まさに「極寒に眠る大地」というタイトルそのものの情景が静かに描かれています。
シンプルでありながら、光や気温、質感のすべてが繊細に構成されており、冬の北海道の自然が持つ厳しさと美しさを捉えた作品だと思います。


入 選
小松  義弘 「廃屋と芦別岳」

残雪をまとった芦別岳の雄大な姿と、風雨にさらされて朽ちていく廃屋とを対比的に捉えた一枚です。
雪山の凛とした美しさと、年季の入った建物の崩れゆく姿が、時の流れと自然と人の営みの対照を強く印象づけています。
白く輝く山並みを背景に、赤錆びた屋根の廃屋が静かに佇む構図は、どこか叙情的で、過ぎ去った時間を感じさせる力があります。風景としての美しさに加え、見る者に物語を想像させる力を持った、奥行きのある作品です。


入 選
斉藤 綾 「ひまわり畑の番人」

この作品は、満開のヒマワリ畑の中に静かに佇む「かかし」を主役に据えた、ユーモアのある一枚です。
タイトルの「ひまわり畑の番人」が示すとおり、どこか人間らしさを感じさせるかかしの後ろ姿が、作品に温かみを与えています。
印象的なのは、ヒマワリが一斉に太陽の方を向いているのに対し、かかしだけがその反対を向いているという構図です。この対比がユニークで、ユーモアと夏の記憶のような懐かしさが漂います。遠くに広がる山並みも、富良野らしい風景として作品の舞台性をしっかりと支えています。


入 選
天野  留美子 「厳冬の朝」

東山の厳冬期ならではの朝の光景を鮮やかに捉えた一枚です。
画面左に大きく広がるナナカマドの枝には、びっしりと霧氷が付き、赤い実との対比が冬の冷たさを一層際立たせています。
背景に広がる雪原と青空のコントラストも美しく、澄み切った朝の空気感が画面全体から伝わってきます。このようなモティーフの作品は今までは少なかったイメージがあります。


入 選
幕田  真理子 「最高の特等席」

この作品は、夕日に照らされた畑の中で、ロールの上に座る子どもの姿をシルエットで捉えた、叙情的かつ完成度の高い一枚です。
沈みゆく太陽と重ねるように構成された人物の配置が巧みで、主題である子どもの存在感を際立たせています。
前景から奥行きのある影が伸び、自然と視線が中央へ導かれる構図も良く、光と影のバランス感覚に優れています。ただし、前回のグランプリ作品と主題・モティーフが似通っていて、作品単体としては申し分ない一方で、コンテストという観点では新鮮さにやや欠けた点が惜しまれました。


入 選(学生)
益田  可絵 「向日葵行列」

緑肥として植えられた広大なヒマワリ畑を、丘陵の曲線美とともに捉えた一枚です。
なだらかな斜面に沿って咲き誇るヒマワリが画面全体にリズム感を生み出し、風景に豊かな動きを与えています。
丘の上の一本木が視線を引き寄せる効果的なアクセントとなっていますし、大地の遠近感が際立ち、夏の風景として印象に残る作品に仕上がっています。


入 選(学生)
山崎  莉緒 「夕日がきれいな樹海学校」

緑肥として植えられた広大なヒマワリ畑を、丘陵の曲線美とともに捉えた一枚です。
なだらかな斜面に沿って咲き誇るヒマワリが画面全体にリズム感を生み出し、風景に豊かな動きを与えています。
丘の上の一本木が視線を引き寄せる効果的なアクセントとなっていますし、大地の遠近感が際立ち、夏の風景として印象に残る作品に仕上がっています。